第2章:表情豊かなウサギ、クーhttps://animalmassage-jaam.com/about/


ウサギは音に敏感な動物だ、このコは特に『クー』という響きだ
けに、魔法にかかったような鋭い反応を見せるコだった。「クー」と言った
ら、長い耳がアンテナのようにこちらを向く、目を合わせると、私の方に
来る。ウサギでも犬みたい反応するのかな?と思って、
「クー、おいで。」
と呼んだら、私の方まで来てくれた。オヤツをあげると喜ぶ。彼との心の
距離を縮めるための、一番大切な合言葉。そう思って、迷わず『クー』と
名付けた。
クーとの出会いから気付けば1年が経った、クーとの生活が生きがいだった。
仕事は広がって、北海道から北九州までセミナーを開催し、いろんな方々に出会って、いろんな
事を学んだ。出張が増えてきて、クーのお留守番も増えた。もちろんプロ
の動物看護師の方に頼んでクーを見てもらっていた。その年の梅雨明けに北海道の出張から帰ってきたある日、
「ただいまーただいま?」「無視??された?」
あれ?あれあれ?クーがいない!!
「クー?!」と呼び「カサカサ、カサカサ、」「 どこ??」
私の寝室からカサカサと音が聞こえる。なんと、クーが私のベッドの上で
座っていた、
「どうやって入ったの?」
取り敢えず、捕まえて、ケージの中に戻した。冷静になって、部屋の周り
を良く見る。想像通りだった。先ずは枕のカバーの端っこ、齧っていた。
「スタンドライトが付かない?」コードが切れている。
「テレビも付かない、」「こっちのコードも齧ったな、」ベッドの足にも齧
られた跡があった。
ゴルフバッグを持ち上げたら、底が抜けた。
「おーいー、クー! !」
あまりの惨状に、堪えていた感情が限界を超え、思わず大きな声が出て
しまった。 慌ててクーの部屋へ駆け込むと、当の本人は知らん顔。
私にお尻を向けて、のんきに牧草をむしゃむしゃ食べている……。
このコの怒ったしぐさを観て、一気に冷静になった。
「私が悪いよね。」「ごめん、出張減らすね。」
クーを見てくれてた方によると、ケージを閉めたつもりだったけど、カギがちゃんと閉まってなかったかも?色々と齧られて、使えない状態になってし
起きたことは仕方がない、クーの体調が悪くならなければいいのですが。
翌日、クーの食欲に変化がなく安心した。
仕事が軌道に乗る一方で、私の心は悲鳴を上げていた。 会社の利
益、効率、数字。それらを優先するたびに、本来一番大切にすべき
「動物の命」や「飼い主の想い」が、ぼやけて見えなくなっていく。
同時に文字が近すぎるとぼやけて見えない、それが老眼の始まりだった。
仕事に近寄りすぎていた。だから、自分が何のためにこの活動を始めた
のかさえ、見失いかけていた。部屋をめちゃくちゃにしたクーの抗議は、
私に「心の老眼鏡」をかけてくれた。おうちで待っているこのコの声さえ
聞けない人間が、どうしてよそのコのケアができるのか?
会社と戦う道を選んだ。『動物ファースト、飼い主セカンド、会社は
サード。』 その結果、想像通り私は居場所を失い、クビを宣告された。
けれど、悔いはなかった。 眼も心も、無理をして焦点を合わせようとす
れば肩が凝る。 合わないなら、老眼鏡をかければいい。 ぼやけていた
自分の進むべき道が、レンズ越しにゆっくりと、しかし確かな輪郭を
持って現れ始めていた。
次回は・第3章:Keithと出会い